公式ブログ

全記事一覧

2013/08/15

消費税が上がると、中小企業はどうなる①

                                                                                弁護士 後藤 孝典

 

消費税率改定実施が微妙な段階に差し掛かったようだ。

 

8月12日内閣府が公表した2013年4~6月期のGDP速報値が実質で前期比0.6%増、年率換算で2.6%増になった。個人消費が伸びたほかに、輸出も好調であったが、企業の設備投資は0.1%減少した。

 

マイナスは6四半期連続だが、その減少率は3四半期連続で縮小していたという。甘利経済財政・再生相は、消費税増税に向けて「材料の一つとして、引き続いてよい材料が出ている」の述べたが、「問題は設備投資だ」との考えを強調した、と日経は報じている。

 

翌13日の日経は、安倍首相が法人税の実効税率の引き下げを検討するよう関係省庁に指示したと報じ、これは来年4月に消費税増税を決めた場合、法人税の引き下げ方針をあわせて打ち出し、景気の腰折れ懸念を払拭する狙いだ、と朝刊一面で論じている。いかにも、来年4月から消費税増税は不可避のニオイがするものの言い方だ。

 

もし、この秋に、首相が来年4月からの消費税増税の「施行の停止」(消費税法付則18条3項)をかけないとすると、中小企業はどのような影響を受けることになるだろうか。

 

懸念されるのは、中小企業金融円滑化法の期限切れに直面した本年3月末の時点で、倒産が予測された約4万強の中小企業のことだ。4万強という数字は、全国420万の中小企業総数のうち、金融円滑化法でリスケを受けた企業の数がその1割りの約42万強であったことを基礎に、転業も事業再生もできず、廃業に追い込まれるのは、そのさらに1割強程度であろうと私が推測した数字だ。

 

幸い、第二次安倍内閣の成立により財務大臣兼金融担当大臣の要職についた麻生太郎氏は、それまでの金融庁と中小企業庁が行ってきた、実効性の弱い、法的根拠も薄弱な「行政指導」的施策によらず、見事なほどに短時間で、「金融円滑化法期限切れによる中小企業の大量倒産の危機」を終息させた。

 

麻生太郎氏は、彼一流の諧謔を交えながら、立ち直りの見通しが暗い中小企業を金融のうてなから放り出そうとする金融機関に向って、そんなことは許さないぞという「恫喝」も加えたのだろうと推測しているが、それよりも、はるかに見事であったのは、マイルドなインフレーションの実現によって問題を解決するという方策を取ったことだ。

 

これは私の推測ではある。しかし、安倍内閣が2%のインフレの実現によってデフレを脱却するという政策を打ち上げ始めた時期と、「金融円滑化法期限切れによる中小企業の大量倒産の危機」がマスコミから消えた時期とは一致する。

 

もちろん、安倍内閣は「金融円滑化法期限切れによる中小企業の大量倒産の危機」を解消するためだけにインフレ政策を採用したわけではないが、あれこれ新しい法律を作ったり、金融機関に対する過剰なまでの行政指導を繰り出すことよりも、インフレによって中小企業問題を解決できると麻生太郎氏が判断しことは、まず間違いないであろう。

 

一方、この秋に消費税増税断行の方針を打ち出したことにより、投資ばかりか消費も火が消え、デフレという怪物が黒い大きなマントを広げて日本全体を再び被うこととなれば、「金融円滑化法期限切れによる中小企業の大量倒産の危機」も再び復活することは必定である.

まだ、小企業者の苦境は、なにも解決していないからだ。

 

                消費税が上がると、中小企業はどうなる②へ

 

 

続きを読む

2013/07/04

実務経営ニュース7月号に事業承継ADRのインタビュー記事が掲載されました。

jitsumukeieiinterviw_jigyoshoukeiadr.jpg
 
 事業承継ADRとは、事業承継をめぐる争いに弁護士が調停人として中立的な立場に入り、合議によって和解解決をする取り組みです。
 
弁護士後藤孝典が代表理事を務める一般社団法人日本企業再建研究会は、2012年4月法務大臣より認証を受けました。
 
このような事業承継に特化した裁判外紛争解決手続(ADR)認証を受けている組織は日本で一つしかありません。
 
税理士、公認会計士、中小企業診断士、不動産鑑定士、司法書士といった専門家が調停補佐人につきますので、和解と一口にいっても、株価の評価、不動産価値の評価、実現するための登記可能性までに配慮した和解を結び、円満解決を抜本的に図ることが可能な仕組みです。
 
例えば、相続発生に伴う『タテ型』事業承継の場で、営んでいる事業の価値が分からず兄弟姉妹間でどのように分割すればよいか分からない場合、
事業承継ADRという『穏やかな』方法による紛争解決方法があるということを是非、税理士の先生方に広く知っていただき、利用していただきたいと思います。
 
顧問先にこのような争いが生じた場合、税理士として巻き込まれてしまうと、どっちの立場に立つのかと追求されたり、気がつけば非弁活動を行ってしまっていたということが少なくないのではないかと考えます。
 
また、対立のあった顧問先に歩み寄りが見られそうな場合、後日紛争の蒸し返しの無いように事業承継ADRで和解契約を結ぶという活用方法もあります。調停人の弁護士が和解契約書を積極的に作成いたします。
 
詳しくは、研究会HPをご覧下さい:http://www.kigyosaiken.or.jp/index.html
 
                                                                    文責:弁護士後藤孝典

続きを読む

2013/03/01

税理士新聞にADRの書籍が紹介されました。

1月25日付けの税理士新聞で当研究会のADR書籍が紹介されました。

zeirishi shiinbun.jpg

続きを読む

2013/02/06

円滑化法期限切れ【中小企業は日本経済の支柱_荒波乗り越えチャンスを切り開け_よりしなやかに強靭に!】(1)

中小企業金融円滑化法の期限が3月末に切れる。再再再延長はあり得るのか?!という議論はついこないだまであったが、もう完全に無くなったのだろう。

 今年1月終わりから『円滑化法は終了します』との前提でNHKや新聞が報道し始め、いわゆる円滑化法期限切れ問題『対策』が報道され始めたからだ。

中小企業支援の専門家(弁護士)として目が離せない。

 法律家から見ると、円滑化法の終了は、今まで金融機関に中小企業からのリスケ要請に応じるようとの努力義務を課していた圧力(かなり強力だった)が外れるという意味にとれる。

 今までリスケをしてきた中小企業から見れば、実現性ある経営改善計画を提出しなければ引き続き返済猶予に応じてもらえないことを意味し、一方、金融機関から見れば正常債権として取り扱えていたリスケ債権を、経営改善計画や調査を踏まえて個別に要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の『不良債権』として評価し、自己資本比率規制に従い金融機関自身のバンランスシートに反映しなければならないということだ。

 この中小企業金融円滑化法が成立した2009年9月末、私が主催する日本企業再建研究会の税理士の仲間らと、通称モラトリアム法だなんて問題の先送りなんじゃないかと議論したのが記憶に新しい。

 

だが、実際は、その当時既に、「我社は未曽有の世界的大恐慌であるリーマン・ショック以降、業況が悪化の一途を辿り、、、」という枕詞から始まる事業計画を作っていた企業は多かったはずで、土下座して泣いて頼んだとしても返済条件を緩和してもらえる状況ではなかったから、弁済を猶予してくれる円滑化法は、多くの中小企業(420万社ある中小企業のうち30~40万社がリスケを活用したという統計が出ている)にとって涙が出るほどありがたい立法であったことは間違いない。

 期限切れ後の世界では、5万~6万社が「経営改善・事業再生・業種転換等」が必要になると発表されている。これは、言い換えれば、更なる費用削減、リストラ、債務整理、事業売却、廃業、という意味に他ならないものと理解している。

 残りの30数万社と、融資可能性を残しリスケの恩恵を受けずに踏ん張り続けた企業に対しては、最近明らかになってきたFUND(ファンド)、ABL(動産・債権担保融資)、DDS(負債の劣後化/資本性借入金)、DES(負債の株式化)といった中小企業金融には聞きなれない横文字の目立つ再建手法を政府が後押しするという理解だ。

 ただ、政府の支援策を活用する場合、特にファンドに買い取ってもらった債権を放棄してもらう場合や、ファンドに出資してもらう場合(ファンドや債権者が株主になるという意味だ)には、定期的な事業報告、人材の送り込みによるキャッシュフローのモニタリングは、政府のお金を出して貰う以上仕方あるまい。

 去年春、再再再延長はないとの金融大臣の発表後、明らかにされてきた5万~6万社といった大量倒産の危機的状況は(ここ何年かはいわゆる倒産件数は年1万数千社であるから危機的と言っていいだろう)、20年も続けたデフレに追い討ちをかけるから、政府は本当に潰す気なのか、正気か、と震撼し、動向に注視してきた。今回の発表は、ようやくの感あり、である。

安倍内閣は、中小企業を見捨てはしなかった、とは思う。

 もっとも、それを頼りにするのかしないのか、となれば話はまた別である。

中小企業における経営権の意義を如何とは何か、政府の支援策とは別の道を歩むことこそが真の事業再生となることもあるだろう。

 政府の打ち出す再建手法が明らかになり情報が氾濫しはじめた。これに埋没することなく、依頼者に合致する再建・強靭化法を編み出すのが当虎ノ門国際法律事務所に与えられた使命なのだ。と気持ちを新たにした。

 

【中小企業は日本経済の支柱_荒波乗り越えチャンスを切り開け_よりしなやかに強靭に! 弁護士後藤孝典】

続きを読む

2013/02/06

円滑化法期限切れ【中小企業は日本経済の支柱_荒波乗り越えチャンスを切り開け_よりしなやかに強靭に!】(2)

参考資料 (1)

(株式会社東京商工リサーチ 記事国内407金融機関(2012年9月末時点)「中小企業金融円滑化法」に基づく返済猶予の実績調査 公開日2013.01.21)

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2013/1224955_2164.html

より一部抜粋)

 

中小企業金融円滑化法は、30万社~40万社の企業が活用したと推定される。このうち金融円滑化法の終了に伴い支援が必要となる企業は5万社~6万社とみられる。しかし、業績改善が進まず再建計画と大きく乖離している企業や、1年以内に策定しなければならない実抜計画を作成できない企業も多い。金融機関は、再建が見込めない企業には資産売却や廃業も視野に入れた対応をする一方で、企業側も問題点を見直し、業績改善や経営立て直しに改めて取り組まなければならない時期にきている。

 

(平成25年2月4日(月)日本経済新聞 夕刊 第1面 記事 下記枠内、傍線後藤孝典)

 

中小向け出融資枠 1兆円
政府、円滑化法終了で対策 資金回収を監視も

 中小企業の借金返済を猶予する中小企業金融円滑化法が3月末に期限が切れるため、政府は激変緩和の支援に乗り出す。中小企業の再生を支援する公的機関の出融資枠を2013年度に3倍の1兆円に拡大するほか、総額で2000億円規模の再生ファンドを育てる。強引な資金回収がないか監視も強める。公的支援を拡充し、中小企業経営の軟着陸を目指す。

 12年度中に、日本航空の再生を手がけた企業再生支援機構を改組し、地域経済活性化支援機構をつくり、政府の再生支援の中核的な組織にする。同機構が低利で資金調達できるように政府の保証枠を拡大する。中堅・中小企業の再生を支援するための出融資枠を旧機構の3000億円から1兆円規模に増やす。

 支援対象として想定されるのは、独自の技術やサービス、商品を持ちながら業績が低迷しているような地域の中堅・中小企業。機構が出資で信用補完し、民間金融機関の融資を引き出しやすくする。そのうえで、販路拡大や新商品の開発、業務提携などの経営ノウハウを提供し、潜在的な競争力を持つ中堅・中小企業の稼ぐ力を高める。

 円滑化法で借金の返済猶予を受けた企業の経営再建はほとんど進んでいない。中小企業の競争力をいかに引き出し、安定した経営基盤をつくれるかが課題になる。

 中堅・中小企業の借金返済を軽減するために金融機関から貸出債権を買い取ったり、返済の必要がない出資金を拠出したりする民間の再生ファンドも後押しする。同機構は12年度補正予算に盛り込まれた30億円を原資にファンドに資金拠出。公的機構が率先して出資することで民間資金の呼び水となることを狙う。1ファンド当たり全体の1~2%分を出資し、総額2000億円程度の規模に育てる。

 13年度の税制改正大綱にも中小再生を支援する措置を盛り込んだ。金融機関だけでなく、再生ファンドも中小企業への債権を放棄しやすくする。

 中小再生の現場を担う地域金融機関の対応にも目配りする。金融庁の監督・検査の指針に「条件変更の申し出に柔軟に応じる」といった項目を追加する。全国の財務局に窓口を設け、中小企業の意見や苦情を吸い上げ、強引な資金回収をするような金融機関がないか監視する。

 金融機関には、中小再生支援の取り組みを定期的に開示することを義務付ける。企業再生の専門家や専門部門といった体制を整備しているか、再生の成功例や実績などを決算報告書などに明記させる。借金の返済猶予の申込件数と実行件数の報告を続けるよう金融機関に要請する。

 

sankoshiryo1.jpg

続きを読む

窓口相談への予約は電話、ファックスまたはメールにて受付しています。
電話受付時間:平日9:00~17:00

メールでのご予約はこちら


法務大臣認証第113号 事業承継ADRセンター

TEL:03-3591-7381 / FAX: 03-3500-0092

窓口相談への予約は電話、ファックスまたはメールにて受付しています。
電話受付時間: 平日9:00~17:00

JR新橋駅 日比谷口より徒歩5分
都営地下鉄三田線 内幸町A4出口より徒歩1分
銀座線 虎ノ門駅1番出口より徒歩5分
千代田線 霞ヶ関駅C3出口より徒歩7分

↑ページの先頭へ