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事業承継について

2013/02/06

事業承継民間紛争解決センターでの和解は、本当に大丈夫なのか?裁判所で決定される判決や和解と同等に扱われると考えても良いのか。

 裁判や裁判所の和解においてもなかなか一度生じた紛争を解決するのは大変なのに、民間で紛争解決なんて出来るのか? 

 

なんの権威もない民間で事業承継の様な複雑な感情や利益、正義がまぜこぜになった問題を弁護士の集まりで解決できるのか? それに紛争を起こした双方が従うなんてことが出来るのか?

 

これが、事業承継民間紛争解決センターなんて事を耳にした大方の皆さんの反応であると思います。

 

しかし出来るのです。なぜか? それは現在の日本の裁判制度が完璧に機能しているからです。

 

なにを馬鹿なことを言っているんだ、裁判制度が完璧に機能しているのなら、何も民間でやることはないのでは? 

 

民間に出来ることは民間でなんてやってきて、何もすべてが良かったわけではない。 国の権威でもってやった方が良いことはいくらでもある、その最たるもんが裁判制度ではないか。

 

特に刑法に関してはその通りです。しかし民事に関しては、少し問題があります。近来、特に複雑になってしまった会社法、そこへ複雑に絡み合う税法があります。

 

裁判に関われば関わるほど、裁判官の特に税務・会計に対する無理解に困り果てる問題が多々あります。あまりにも事業承継に付随する問題が複雑に絡み合い専門にこの分野を理解出来る裁判官の数が少なすぎます。

 

かえって、鎌倉時代の民事訴訟法である「所務沙汰」(御家人のための不動産訴訟)のように、訴人(原告)も論人(被告)も、自己の主張に法的根拠があることを「立証し」、これが本件を規律すべき法なのだと、法の存在を証明する必要があれば、良いのかもしれませんが、現在の高度で複雑な法体系においては、原告も被告もそれだけの時間と費用を割くことは出来ない。けれど、税務・会計を熟知する裁判官も少ない。

 

だからこそ、民間の事業承継を専門に扱う紛争解決センターが必要なんだと結論づける気は全くありません。

 

「会社法、税務、会計が分かっているから私たちにまかせなさい。」

 

こんな事を主張しても、合法的な権威や執行力を持たない民間の弁護士に、誰も会社の生死を決する和解判断をお任せしますとは思わないでしょう。

 

しかし、日本には、高度に整備された裁判制度並びこれを支える民主主義に基づく国家があります。事業承継の紛争が企業価値、事業価値を専門とする紛争解決センターで和解され、その和解結果を裁判所に持ち込めば即決で和解を追認してくれます。これには強制執行力も付随しています。

 

また、法律、裁判制度の確立している国家において、そこから逸脱するような和解案を出したとしてもそんなもの受け付けられない事は、民間紛争の当事者達にもよく分かっています。

 

現に裁判制度の確立し、発展した国であるからこそ、民間の紛争解決センターが機能するのです。

 

300年間の平和の中、近代的商取引と共に裁判制度が、発達していた江戸時代は、訴訟頻発社会だったようです。公事宿の主人や公事師のほかに、訴訟技術にたけた百姓の存在や、(公事宿の主人ではない)「扱人」の存在が知られています。

 

例えば、山形藩の大庄屋を務めた佐藤理兵衛は1709年に、訴訟の心得を和歌の形にして子孫のために残している。日常的に訴訟が多発する背景がなければ、子孫のために訴訟に対する対応方法を言い残すことはしなかったろうと思われます。

 

越後国水原代官所管内では、金銭貸借に関する訴訟、質入された土地に関する訴訟、庄屋の職務に関する訴訟など訴訟類型ごとに原告の訴状と被告の答弁書を例示する訴訟関係文例集というべき書物が広まっていたことが知られている(渡辺尚志「武士に[もの言う]百姓たち、裁判でよむ江戸時代」170頁。草思社)。訴訟が日常的に多発していたことを示す重要な証拠といって良いのではないか。

 

江戸時代の百姓にとって、自己に権利があり相手方に義務があると意識し確信するから訴訟をおこすのではなく、日々の生活に必要があるから起こすのです。

 

現代においても同様である。権利義務と言う観念による捉え直しは法律家の後知恵にすぎない。権利義務の観念は、すでに存在する法的紛争を整理し論理化するにつれて発達するものであるから、権利義務観念の発達とか緻密化に伴い訴訟が提起されやすくなることも本当であるといえるが、権利義務の観念ないしは意識が発達したから訴訟が多発するようになったとはいえない。

 

訴訟の提起は、その時代の権力によって自分の言い分が容認され承認されなければ毎日の生活とか生産活動が維持できないといった、現実的な必要性からなされるのだ。

 

特に、ヨコ承継(合併・買収、会社分割、事業譲渡)にしろ、タテ承継(相続)にしろ事業承継においては、なるべく迅速に自分たちの企業価値をはっきりさせなくては事業を続けていくことは非常に難しくなる。

 

企業・事業の価値判断、事業再生、事業承継を専門とする弁護士とその補佐をする税務・会計・特許・不動産の専門家による迅速な紛争解決を取り決め、裁判所による追認を受けるというこの民間弁護士によるADRは、いま、現実的に必要とされるものではないか。

 

国家も裁判所も民間の紛争解決センターを必要とする時代に入ったから、法務大臣認証制度が始まったのである。

 

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2012/04/19

法務大臣認証のADR 第113号

我々の日本企業再建研究会が法務大臣認証のADRの認証をうけました。

我々の「事業承継ADR」は、これまでに法務省が認証を与えてきたADRとはかなり違いがあります。

最も特徴的な点は、調停人となる弁護士と調停補佐人となる税理士、公認会計士、不動産鑑定士、司法書士、弁理士、中小企業診断士とが一緒になってADR和解手続きを進めるところでしょう。

このように法律家と分野の違う専門家が協力して紛争解決にあたるADRは他にはないでしょう。裁判組織にもなく、世の中全体を見渡してもそのような組織は、あまりないでしょう。

このような仕組みになったのは、中小企業に関する法的紛争の多くは、法律さえ知っておれば解決方法が必ず見つかるというほど単純ではなく、法律と税務の知識、それにできれば会計の知識がないと、問題がどこにあるのかさえ、なかなか理解できないことをなんども経験してきたからです。

事業承継に関する紛争の多くは、事業の価値とか、株式の価値を巡って発生する事例が多いのです。裁判所だけではなく、事業価値を腑分けする仕組みがなさ過ぎることが紛争を多発させ裁判をいたずらに長引かせてきたと思います。


ADRとは法的紛争を話合いで解決する仕組みです。所詮人と人との争いが不可避な人間世界にあって、それでも人間の知恵を信頼しようという仕組みです。

そして、今日こんなブログのエントリー(イザのyuyuuさん)にであいました。

『日本は古来から話し合いの伝統がある。
議論のとても上手な民族だと思う。
先輩、後輩、年少、年長、女性、男性、職業、上司、部下の区別なく、自由に議論を楽しむ気風がある。
そして、西洋の民主主義のように、多数決では決めるような容易な方法は取らない。

昨日の会議でも、まず誰かが議題を出し、自分の考えを述べる。
それに対して賛成の挙手を求める。
当然、まだ議論してないので全員の手が挙がらない。
次に反対の人が意見を述べる。
全ての反対者の意見陳述が終わると、いよいよ議論になる。この問題をあらゆる方向から分析するために全員が意見を述べる
意見が出尽くした所で、もう一度、決を取る。
最初に賛成していた人間が反対に回ったり、反対していた人間が賛成側に回ったりする。

そこで、さらに議論が続く。
意見が出尽くしたところで決を取る。

しかし、まだ意見が大きく分かれるようだと、この問題は次の会議に持ち越しとなる。
賛成・反対の双方が様々なデータを集めて、もう一度議論する。そして、双方の妥協案を探る。あるいは誰かが第3の解決策を提案する。

日本の会議は全員の合意を目指す。
合意するまで議論するので時間は掛かる。
でも全員の合意で決められた事は守られる。

この日本式の議論は、おそらく村落共同体の寄り合いからスタートしたものだと思う。
中世の楽市・楽座の集まりでも使われ、武士団の内部会議でも使われた。』(イザのyuyuuさんより引用)

これはまるで我々のADRへのはなむけの言葉である。
                                以上

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